JUVENILE



つまらない間違いを繰り返し
積み上げるだけが僕らの正義
きみが自分でつけた傷を
ひたすらに美しいと思い
僕はがらくたを紡ぎ出す
ミステイクばかりの数字が積み上げられて
集う痛みの在りかを
ホームと呼んだよ
世話ねえなって
誰かが呟いた
僕らはむしろ
誇らしい気持ちでいたのさ
物語は滞りなく進み
ページがめくられるごとに
差しさわりない痛みを覚えた

夜が明ける前に消え去る言葉を
巧妙に積み上げて
騙し騙しやってきた
きみの命を繋ぎ止めたら勝ち
だいたいにおいて僕が勝った

ページをめくり
たわいない哀愁とともに
夜を越えていった
僕らにとっては
国境線は危険ばかりで
這いずる頭上を
過ちが飛び交う
ジャスミンティーが温くなる
夜が明けきる頃には
蝙蝠(こうもり)の死体が落ちてくる
生き急ぐための
支度をしなくちゃならなかった

哀切と痛みとどうしようもない塗炭(とたん)
言うほどでもない擦過傷と
捻り潰される深手
薬の有無が見本市で
どれほどでもない空虚
ただ生きるのが下手なだけ
世界を毎日塗りかえているだけ
傷痕で日数を数えているだけ
そんな乱暴なやり方でで
息を繋いだ

記念碑はもはや向こう見ずで
あの物語は過去になれど
僕らの日々は続いている
草いきれはそのままに
世話ねえなって
僕が呟いた
さあ音楽をかけてよ
暁に焦がされて
少しばかり死に急ごう

あの時
あの場所には
涙があって
そんなものは当たり前で
夜空を見上げて
星を見て
きみがひとつ解説を入れてくれて
少し賢くなる
来年には忘れていて
再来年にはどちらかがいないかもしれなくて
だからって今すぐに
落とされる蝙蝠になるのはもったいない
もうひとつ解説を加えてほしい
来年には忘れていても

帰りの電車はひどく窮屈で
きみのいる街への距離を思った
もうとっくに夜は明けていて
きみが教えてくれた星は向こう側へ

過ちばかりを積み上げる
つめたい夜に息をして
過ちとして手を繋ぐ
生きたいって叫んでる

つり革に掴まる朝に
詩のひとつを思い描いてみる
強風の観覧車から
世界を見下ろして

祈りを届けてよって
言外にきみは望んでいた
距離がひとときだけ詰まった夜に
星に見下ろされて

ひとつふたつと命が零れる
いつかの夜明けとは似つかない
雨降りの朝に
あの日々を思い返しながら
僕はカフェオレを飲んでいる
あの夜空の延長線上にあるだけの
ジュヴナイルの残骸の物語
僕はまだ生きている

這いずる蜥蜴(とかげ)の作法で
僕が生きるために切り落とした尻尾(しっぽ)
誰かが露命を繋いだりもする
綺麗にはまとまらない
とっくに捨てられたジュヴナイルが
雨音に浮かんでいる



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