呼吸を止めて



呼吸を止めて
ちょっとあたしを見て
揺らいでるのはわかってる
けれどちょっとだけあたしを見て

肺で呼吸するのをやめて
瞳孔(どうこう)を開いて
指先でものを見て
つくり笑いをしないで

呼吸を止めて
ちょっとあたしを見て
疵痕を撫でるのをやめて
永遠を捨てて

くだらないことを言ってるのはわかってる
夢はお花屋さんってくらい真実味がない
馬鹿をみるだけだって知ってる
こんなん全然いいことじゃない

けれど
絶え間なく続く終わりなき呼吸を
わずかでもいい
止めて
ちょっとだけあたしを見て

カエルの飛行みたいになって
特別すごいことは何もしないで
溶けるシロップのようになって
ただ一瞬だけあたしを見て

呼吸を止めて
肺で呼吸するのをやめて
作り笑いをしないで
疵痕を撫でるのをやめて
独りの慟哭(どうこく)を忘れて
虚無の連鎖を亡くして
明日を望むのをやめて
涙を刻むのをやめて
希望に逃げないで
闇を恐れないで
瞳孔を開いて
永遠を捨てて
らしく生きようとしないで
呼吸を止めて
ただ少しだけあたしを見て

ちょっとでいい
刹那だけでいい

呼吸を止めて

ただまっすぐにあたしを見て

永遠を捨てて
らしく生きようとしないで
呼吸を止めて
ただまっすぐにあたしを見て



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