雪を待っている



あの頃の僕からは
思いもしなかったところに
僕は立っている
君はそばにいない

久しぶりに自転車をこいだら体が重くって
チェーンもきりきりうなりをあげて
ギアもうまくきまらないし
タイヤの空気は中途半端

それでも
前に進むことに
今となってはどれだけの意味があるのか
わからない

あの頃の僕からは
思いもしなかった未来に
僕は立っている
地図もなく、しるべもない

もうそろそろまた冬が来る
こちらの冬は暖かくて
いまだに慣れないけれど

初めてこっちで雪を見た日から
いくつもの時が過ぎて
もう雪が舞っても驚かなくなった

あの頃の僕たちからは
想像もできなかった明日で
君と僕がすれ違う
触れ合う手のぬくもりもなく

それでも
冬になれば雪を求め
君の熱を探してしまう
昨日の続きでしかない
まっさらな原野には立てないね

明日を祝おう
昨日に祈ろう
今日を紡ごう

明日へ歩いて
昨日を落として
今日が照り返す

昨日に戻れずに
今日ですれ違い
明日は別な場所にいる

君と僕がすれ違う
まっさらな原野には立てないね

昨日の続きでしかない今日から
君がいた夜の校庭に
ずっと続く線を引いて

自転車で通り過ぎた
君の髪が揺れた



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