勿忘草
(
わすれなぐさ
)
忘れないでと言いたいけれど
この
叢
(
くさむら
)
に咲いた勿忘草は
私が
手折
(
たお
)
り
持ち帰りましょう
小さな囲いの中から
煙草の煙を吸い込む空に見惚れては
明日の夢を
見ていたのでした
ありふれた夢の
その一粒を
勿忘草の代わりに植えて
私はここを出るのです
忘れないでと言いたいけれど
勿忘草は手折ります
どうか後ろを振り返らずに
夢の向こうだけを見てください
湿った空気がじゃれついて
勿忘草の季節も終わります
活けた花もいつしか枯れて
忘れない想いだけここに