ガーリッシュな四月末



ミヤコはいつだってガーリッシュ!

ねえ今も教室の隅っこで本なんか読んでる
それもライトなやつじゃなくて文学とか言われちゃうやつを!
ああなんてガーリッシュ!
限りなくガーリッシュなミヤコ
揺れる髪にキスしたい

ミヤコは桜もとっくに散った先日ひとり遅れて初登校してきて
病気の療養してましたって
ほんとは切っちゃったから入れられてただけなんだけど
でも療養! ああなんてガーリッシュな響き!
サナトリウムとかギムナジウムの次くらいに乙女な単語を軽々と身にまとうミヤコはガーリッシュそのもの
でもガールではないのだわ

あたしというガール
ガーリッシュになりきれないあたし

ガーリッシュなミヤコ
とっくにガールじゃなくなっちゃったミヤコ

ミヤコかわいい
愛してる


ミヤコにそれなんて文学?って聞くと帰ってくる答えはだいたい同じ
「文学じゃないわよラヴクラフトだもの」
「文学じゃないわよヘミングウェイだもの」
もし文学の時はこう
「カミュ」
あたしにはさっぱり違いなんてわからない
そんなささいな違いにこだわって反発するのもガーリッシュ!


窓際に座って本に夢中なミヤコの髪が微風に揺れる
あたしは放課後それを見るのが好き
気が向けばだいたい夕日が沈むころまで見ているし、実際いつまでも見ていたい
でも本は読み終えられる
ミヤコは一日一冊本を読む
夕日が沈むころには読み終わる

サンセット
教室
ミヤコ
文学(今日は太宰治)
時が止まったようなモラトリアム
ミヤコというガーリッシュの
ネバーランド


太陽が沈んで
ミヤコはすっくと立ち上がる
読み終わった本をびりっと破いて
ゴミ箱に捨ててミヤコは言うの
「全然意味わかんない」



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