77.7に合わせて
ラジオから垂れ流されるサッドソング
たまに天気予報を挟み
ＣＭを挟み
次に流れるのはメランコリー
これはどこか
僕らの関係に似ている

南では台風が迫っているらしい
こちらときたら
まるでかわいいもんさ
弱々しい雨滴(うてき)がぽつりぽつりと
ラジオのノイズにも満たない
行くあてのない午後

チャンネルはそのままで
ラジオが歌い出すサッドソング
ふと
僕らの記憶に重なることもある
出会ってもいなかった頃の僕たちが
共に泣き震えていた頃の
センチメンタルサウンド
このまましばらく生きていりゃ
同じソニックを聞く日も来るだろう
けれどそれは今日じゃない
たわいない雨滴
雲の上へ行くなんて
ただの人に過ぎない僕らには夢物語
晩秋かもしれない
来年かもしれない
再来年かもしれない
僕らのサッドソングが重なるのは
その時には
きっと泣いてしまうよ
雲の上へ行くなんて
ただの人に過ぎない僕らには夢物語
今夏(こんか)はどうやら会えないね
ベガが見えない夜が来る

Altair(アルタイル)
凍りつく記憶を溶かして
Altair
抱きしめた祈りを謳って
Altair
傷痕を誇りに変えてよ
Altair
嘆きの声が聞こえるかい？
Altair
愛の賛歌が聞こえるかい？
Altair
僕らの些末(さまつ)な祈りは届く？

Altair
天球の虹で
あと何億回の逢瀬(おうせ)を重ねる？
同じ景色の中で
僕はあと何回きみを抱きしめられる？

チャンネルはそのままで
ラジオが歌い出すロッカバラード
ふと
きみが後ろに立っているような気がして
カフェオレを２杯用意したくなる
雨音が少し強くなる
きみの強(したた)かさが欲しくなる
ＤＪの今日の選曲は
僕にそれを許してくれない

チャンネルはそのままで
ラジオが震わせるサッドソング
初めて手を繋いだ
あの日の僕たちが
泣き叫ぶ代わりに聞いたナンバー
忘れじのサッドソング
ねえベガ
見てごらんよ
光の速さで
命が通り過ぎていく
一瞬の瞬きに過ぎない
サッドソングに
少し命を預ける

チャンネルはそのままで
ラジオから垂れ流されるサッドソング
きみの街には届かない
たまに天気予報を挟み
ＣＭを挟み
次に流れるのはティアドロップ
曇天(どんてん)に塞がれる心
雨音が少し強くなる
並んだカフェオレが冷めていくのを見つめながら
スマートフォンを手に取って
気の利いたＤＪに何をリクエストするかを考える
ねえベガ
きみの街へは届かないけれど