XXX回の涙



カーライルは言った
オレは今まで3回の涙を流したのだと
リサは言った
私は今まで7回も雫を滴らせたと
アルベルトは嘆いた
僕は今まで176回の涙を拭いたのだと
マリアは叫んだ
自分は今までXXX回の涙を

きりがなかった
けれど、カーライルが恵まれているのかと問われたら、僕はノーと答えただろう
そう答えるしかないのだろう

エリスがはたして幸せだったのか
どれだけの数で笑ったのか聞きたかった
聞けるうちに聞いておきたかった

愛さえあれば生きていけるなんて
青い幻想を抱いていたころ
僕はジュニアと会ってはいなかったし
当然
問うこともできなかった
今わかることは
その問いかけがどれだけ無力なのかということだ

何人かさえも僕は包むことができず
またその全員に包まれることもなく
今の僕の隣にいるのはベアトリーチェだ
手を握り合うぬくもりは
何よりもあたたかく
あまりにも小さい

出会えなかったきみに問いかける
出会うはずのあなたに問いかける

問いかけるべき言葉なんて
どこにもないのに

街には風が通り抜け
いつかの誰かの呼吸が
僕の呼吸と重なる
それだけが
唯一の救い



BACK                                              TOP