アンバランス、ノーバランス、スウィートダンス



曲芸みたいな遊戯を繰り返して生きてる
これはもう遊戯と呼ぶしかないな
やつの苦笑を招いても仕方ない
見放されても致し方ない
それでも僕は
甘いリズムで踊り続ける
きみが規則正しい寝息をたてる隣で
アンバランスなダンスを

ああ
まったくここは新天地
これでもかってほどのノーバランスで
結局は続けるライフワーク
積極的に示威(じい)も自慰もする気はないけど
天地がひっくり返るほどの不安定さで
生きることを
やめない

ディストーションでもディレイでもない
けれどひん曲がった残響で
ああ
まったくここは新天地
慣れぬフロアをかつんと鳴らして
舞い続けるスウィートダンス
かかとが外れるのに気をつけながら
曲芸の遊戯
これでもかってほどの致し方なさを振り払い
三連符をかつんかつんかつんと
愚者のように

結局のところ
地獄の三丁目でだって
続けてやろうという
そんな命題

ご覧あれ
愚者の軽業(かるわざ)で舞う舞踊を
ご覧あれ
風に吹かれて砕ける蝉の亡骸(なきがら)

もう夏が来る
目前に迫っている
地球はまだ止まらない
ああ
まったくもって新天地
カーテンのない出窓からこぼれる陽光が
合図みたいに急かしているけど
落ち着けよって
慌てるなよって
言い聞かせて
さあ
時計の秒針を進めよう

−金曜日の夜の都心の繁華街となれば
−人に酔うのも当たり前
−わずかな殺意さえ覚えるのは当たり前とは言わないが
−どこか言い訳の致し方なさで
−すこしばかり歩を早める

淫奔(いんぽん)の中心地からいくらか離れているとは言え、道を40メートルも歩けば客引きにぶつかる。まとわりつく(はえ)は払えるものではない。そこにだって生活と人生はある。もっとも、今の自分の状態からすれば、知ったことではないと落ち着くのだが。そんなことを気にする余裕がないのではなく、そんなことを気にする資格がそもそもない。何も嘆くほどのことでもなければ、愚痴をこぼすことですらあるまい。もう当分ここに来る予定はない。できればずっと遠慮したいものだが、私用で来る可能性を考慮すれば、そういうわけにもいかないだろう。せめて金曜日の夜だけはごめん被りたいけれど。ここにも四季はあるが、蝉の亡骸を探すのには少しばかり難儀するはずだ》

これしか道がないとは言わず
これしかやり方を知らないとは認めず
ただ自分の意志と決断で
ひたすらに
愚かな遊戯のリズムに揺れていよう
ああ
ここは新天地
明かりの(とも)らないダンスフロア
きみが寝息をたてる隣で
夢まみれ

フェイバリット・ナンバー
鳴らしてよ



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