300メートル |
十全であることばかり求めるわりに 自分でぶち壊しにしてばかりで とうてい満足などできないけれど それもまた悪くはないだろうと 中途半端に許している そうやって続いてきた人生 全部嘘ですって言えればよかったけど 本当のところも多分に混じってるし ごまかすことも満足にできないから願う気持ちが消せない そうそう叶わないと知っているから そうやってやり過ごしてきた人生 どこも美しいものはない 結局 人間でしかないことを 思い知るばかりだったよ 夢物語を紡いでも 愛の 僕の部屋は散らかりっぱなしだったよ お腹が空いたら菓子パンを食べていたよ 見ないふりをして 聞こえないふりをして 美しいものがたくさんこの世にあると これがそうなんだよって きめ細やかに でもいまだに 一瞬 僕は 時々錯覚してしまうよ 美しいものがこの世にあることを さあ捨てようか 美しい気がする全てのものを さあ始めよう 滑稽で 馬鹿らしくて汚らしくて 劣情まみれでいかがわしくて 嘘でもつかなきゃやってらんないような 現実の人生を始めよう 生きよう けれど僕はやっぱり偽物をこしらえるだろう これが美しさですと看板をぶら下げて どこにもない人生を騙るだろう それを それを罪悪と知りながら それを不知と知りながら 現実の人生を生きながら みんなを騙して生きるだろう 誰かに騙されて生きるだろう さあさあご覧あれ これが愛というものです かくも美しき輝きは いかなる宝石にも劣りますまい 少々値は張りますが 決して損はいたしません 在庫には限りがございます どうぞご決断はお早めに こんなんで結局なんだかんだと生きてきた つまらねえ人生の ちょっとは褒めてやってもいいよな どんなちっぽけな人生でも 生きようともがいたなら 手を取り合って 無様で喜劇の人生を生きよう 不条理の橋を渡って 理不尽の石段を踏みつけよう 海辺のカラスに石を投げるふりをして レンタルした自転車で知らない街を駆けよう 夢も希望もへったくれもない人生を競歩して 時として偽物の美におぼれながら 愛らしきものを積み上げよう 決して美ではないその何かで ひとつにつき 300メートルずつ走ろうか |