かもしれない



自由なんだよと吠えてみたところで
自分のことすらままならなくて寂しくてもがいて
消えたくて消えられなくて戦って敗れて
連戦連敗で助けてって他力本願で怠惰
かもしれない
タイピングが少々早くなって得るものもない
かもしれない
予定調和という裏切り
蛙が鳴いていることには
かもしれないね
ああなんて世界の鈍色(にびいろ)
下衆(げす)にもなれない
かもしれない
さりげなく華やいだふりをして
愚かで被害者ぶって禍々しくもなれなくて立派にもなれなくて
塵芥(じんかい)みたいなものなのに風に散ることもできない
かもしれない

命を()むことができてないんだよって
きりがないから
かもしれない
賢くなった覚えなんてないのに


夢見がち
夕立と亀
野良猫のスキャット
命を食み続けているきみと
何も食めないでいる僕
心がすり減っているのは僕の方だ
宵闇と銅鑼(どら)
蚊とんぼの目まい
屑鉄
理想主義者
夢見がち
命を食めば
夢見心地
宝船の落盤
きりがないよ

やあどうもって
現れて
なくしたものはなんでしょうか
問われて
そもそも持っていたのでしょうか
聞き返して
かもしれません
って

確定的要素がないからって
迷い子ぶってみたところで
それこそきりがない
優しくされたいけど
こちらが優しくする余力がない
かもしれない
脳に涌いているこの虫はなんなのでしょうかって
そもそも脳なんてあったのでしょうか
かもしれません
って

電波の汚辱
蝸牛(かぎゅう)の弊害
暗紫色の光明
野良猫のスキャット
感嘆の畏怖
歎願(たんがん)の武威
鉛色の冒険
野良猫のスキャット
螺旋(らせん)のループ
透明な萌葱色
色鳥の灰
野良猫のスキャット
脳がありません
かもしれません
脳がありません
かもしれません
野良猫のスキャット
球体の四辺
薄羽蜻蛉(うすばかげろう)の潤沢
陥穽(かんせい)の法則
野良猫のスキャット
脳がありません
かもしれません

抱いてくださいって
抱かせてくださいって
たったそのことだけを言うために
脳がほしい
かもしれないではなくて



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