ジェットコースター



僕が僕へとつぶやく
何の意味もない問いに
どこも的確でない答えを返すよ
頭がうるさくて痛いのに
これはきみのせいじゃないから
なおのこと馬鹿馬鹿しくて
ふてくされたついでみたいな湿度で
ちっとも的を射ない返事を
誰よりも真剣に返すよ
どこも嘘を吐きたくないという
つまらない誠意で
唐変木(とうへんぼく)のふりをしてみるさ
正解の言葉も飾っただけの言葉も
僕らの救いにはなり得ないから
お願いだからきみは問わないでおくれ
正解という嘘を口にしてしまうよ
手違いじゃ報われないよ

なんともみすぼらしい道で
ちょっと失礼して
煙草をふかせば
その煙の向こうに涙をこらえる僕がいる
登下校のための帽子を
道路に投げられちまって
気持ちの行き場も今後の方策も見つからない
まるで幸福な
ささいな出来事
涙をこらえる僕は最善手(さいぜんしゅ)を選べずに
道路に一歩踏み出した
それじゃあ泣くわけにはいかないな
視界を滲ませるなよ
車列はまだ途切れている
首尾(しゅび)よくやってのけなよ
まるで当たり前の出来事
煙の奥に消えていく

めちゃくちゃに組み上げたジグソーパズル
それを地図にして
海でも目指そうか
今さらの海岸線には何も求めちゃいないよ
道中でふっと彼女が(かす)めれば
まったくの御の字
海岸線で吸う煙草はきちんと携帯灰皿に捨てて
帰り道で何かを拾うなら
きみに捧げる吐息がいい
ジグソーパズルはもうばらばらで
次々とこぼしていく
誰かが拾うパンにはならないだろう
ささやかな種になってくれればいいと思うのは
いささか傲慢が過ぎるだろうか

きみのことを好きだと言えず
言葉を濁すのは
語尾が諾々(だくだく)と跳ねないのは
彼女が隠り世にいるからではなく
僕が正解のまま生きられないからだし
それはきみも同様であるからだ
正鵠(せいこく)が鳴くほどの驚天動地があれば
少しは違うのかもしれないが
重なる世界で正しく行き来はできない
垂直に走る線路はジェットコースター
曲芸めいたやり方で()()を渡るなら
通行証のために
今より少しばかり身綺麗になって
今よりずっと身軽にならなくちゃ
タトゥーじゃ証明にならないね
そんなだから
妥協みたいな結末をたぐり寄せても
どうにもこうにも幸福だよ
結局それが
何にもなれない今の僕の真実だよ
認めるにやぶさかじゃない
人に潰されながら人に救われているなんて
ちょっと拝借した言葉を明かりにして
大通りは人が多くて目眩(めまい)がひどい
車が通れないような小径(こみち)をするすると行くよ
携帯灰皿はポケットにある
立ち止まって煙草に火を付ける
ちょっと失礼して
誰かと行き違う頃には消すさ

めくるめく
まばたき
心臓を撫でるきみの鼓動が
触れあう境界線を微塵切(みじんぎ)りにして
くりかえす
どこにも奇跡の音なんてない
体温で繋がって
揺らぐ呼気が共鳴する
夜は更けて
恐怖を押し流すぬくもりを繋いで
生き延びられるだけの理由で縛って
めぐりゆく
一夜の閃耀(せんよう)よりは
メリーゴーランドで手を重ねたいけど
そんなことさえも忘れて
今は体を預ける
めくるめく
まばたき
心臓を撫でるきみの鼓動が
触れあう境界線を微塵切りにして
たどたどしいステップで
ささやかに踊ろうか

僕が僕へとつぶやく
何の意味もない問いに
どこも的確でない答えを返すよ
唐変木のふりをして
きみは問わないでおくれ
嘘を口にしてしまっては
視界が滲んで
帽子を拾いに行けないよ
悪手とも言い切れない中途半端な思い切りで
きみとの距離を思いながら息を吐く
フリーパスなんて手にできるはずがない
遊園地のチケットはもぎられて
またジェットコースターに乗るためには
100円だけ足りない



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