煙には違いない



銘柄が変わっても
ライターで火を点けるなら
きっと煙には違いない

だいたいどの日も
吸っていたさ

烏龍茶であろうと
ブラックコーヒーであろうと
カフェインがあるには違いない

だいたいいつだって
飲んでいたよ

お気に入りの箱庭に
すっかり配役を並べて
動かさないまま窓を見る
そこからだって外には出られる
少しばかり面倒くさくて

今を考えるよりも
今までを考えるほうが簡単で
これからを思うよりも
これまでを思うほうがたやすくて
それからなんて思い描けないけど
それまでならば何とかなるよ

煙草を吸うために窓を開けても
すっかり並んだ配役は動かなくても
外に出るための足があっても
少しばかり面倒くさくて

吸ってきた本数なんて
さっぱりわかりやしないけど
だいたいどの日も吸っていたさ

思い出の中にしかいない人も
思えば思うことができたとして
きっと煙には違いないね

さあ、配役を動かそう!
外に出ることを選べずに!
それは今を見つめることか?
これからの日々に益することか?
煙草を吸うついでの気がして
カフェインの余った成分みたいな

お気に入りの箱庭で
スティーヴがビリーを歌って
エミリーは恋に破れてしまって
ミシェルはひとりっきりだ
外に出ることを選べずに
箱庭はすぐに放られて
誰もそこで息をしなくなる
少しばかり面倒くさくて
手が伸びなくて

勤勉なものが
ここにあるとしたら
きっと煙に違いないよ
過ぎては消える

少しばかり面倒くさくて
ちっとも動かずに
頭の中でレコードに針を落とす
それも煙には違いないけど
今これから鳴る



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