小さな航海



書きたいよ
書きたいね
僕が音楽になれたらよかったのにね
うっかりひしゃげて頓挫
言選(ことえ)りも迷子になる
些少の後悔を取り混ぜて海に出ようか

僕は僕にしかなれない
祈りの数だけ超えられもしない
小さな箱庭で
()げの(すさ)びを繰り返しては息をする
言選りは迷子のまま
海のやりようなんて知らないよ

生きていてよかったと
素直に言えるほどじゃない
否定できるほど塗れちゃいない
太陽の屑をまぶした小さな箱庭で
きみが見る迷子の言葉は
小さな航海を始めるだろうか

行方知れずに息をする
月の屑より太陽の屑がいい
些末な反抗心で組み上げた箱庭に
登場するのはきみがいい
生きていてよかったと
苦笑いで伝えるために

彼女が見られなかった明日にいるよ
紫色の蛙は巣に籠もりがちだよ
籠城のやり方ばかり学んでも
さあ、海に出よう!

さあさあみんなおそろいで
十五の海を越えてきた勇敢なやつさ
めったに見られやしないよ
そんな茶番劇が
箱庭で始まる
僕は僕にしかなれない
祈りの数だけ超えられもしない
行方知れずに息をする
きみの熱を今ここに届けてほしい
それは嘘っぱちでもかまいやしないから
生きていてよかったと
だったら苦笑いで言うさ
だから苦笑いで言ってよ

些末な後悔をやりくりして
十五の茶番劇をやり過ごして
毎日の騒乱に耐えかねても
きみがここに帰るなら
少しばかりは息を続けていられる
僕のかわいい箱庭
きみという主役がいなくちゃ話にならない
毎日の騒乱に耐えかねるかい?
きみがここに帰るつもりなら
少しばかり息を続けていてほしい
海のやりようなんて知らないよ
それでも航海は始まるのだろうから

いつだって言選りは迷路のままで
それでもきみが惑わされるというなら
箱庭を抱きしめて
とても小さな航海
太陽の色が僕らを間違えなくても
僕らが僕らをきっと間違えるから
それならそれでいい
生きていてよかったと
苦笑いで言うさ
だから言ってよ



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