ステップ



ステップを踏んで
何も気負うことはしないで
もう十分に傷ついているから
ステップを刻んで
もがく手はすりぬけて
すれ違いの中で息をする
まるっきりの不幸とも言えないのが
心地悪くて
だから
きみに聞きたいことがたくさんある

夢の宮に出くわして
まるで手ぶら
格好がつかない
息苦しさを重ねるごとに
僕は弱くなる
賢しくもなれない
処世術をひとつ失うたびに怖がりになる
そんな僕を
みっともないと思うかい?

色を色として見ればよかっただけ
花を花として映せればよかったはずで
空は空として見下されればよかった
夢の宮で案山子(かかし)にもなりきれずに
まるで手ぶら
格好がつかないよ
命を命のまま愛せればよかった?
今さら
滑稽に過ぎるね

ステップを踏んで
何も気負うことはしないで
もう十分に傷ついているから
ステップを刻んで
あがく指先はどこも重なれずに
すれ違いにも満たない
当たり前のように続く景色に
きみはいないから
だから
聞きたいことがたくさんあるよ

ステップを踏んで
ひとつひとつで問いかけて
抜け落ちていくものがたくさんあるんだ
十二分に幸福に浴しているから
嘘つきにもなれなくて
向き合うことが怖くて
意識の内を右往左往
ねえ、答えを教えてよ
盲目のもぐらが
次にどこへ向かえばいいのかを
わからないから

ステップを刻んで
ひとつ、ふたつ、みっつ
その度に
きみに聞きたいことがあるよ
ステップ、ステップ、ステップ
今のままじゃ
どこにだって向きようがないんだ
明快に答えを示してよ
ねえ
まるで手ぶらで
格好がつかない
僕をどう思う?

本当に聞きたいことは秘めたまま
きみのいない世界で
こんにちはとさようならを繰り返して生きている
たくさんあるんだ
だいたいは削がれてしまったけれど
聞きたいことは山ほどあるんだよ
本当に聞きたいことだけははっきりしていても
秘めたまま
ステップを踏んで
気負うことをしないで
するっと忘れたふりをして
すれ違いにも満たない指先

ステップの度に聞きたくてしょうがなくて
意識の内を右往左往しながら
教えてほしい
僕の答えはきみが持っていってしまって
いなくなって
そして
続く道程(みちのり)の中で
十分に傷ついて
十二分に幸福に浴して
どこへ向かえばいいのかわからずに
教えてほしい
わからずに
息をしている



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