それって愛だっけな



それって愛だっけなってふとわからなくなる。
やけに涼しい夏の日、逆に出歩く気がしなくなる。暑さに裏切られた気がして。
まったく贅沢なもので、熱にやられて食欲をなくしているくせに。

積み上げた本を綺麗に整理してみた。
けれどそれが何をもたらすでなく、愛の真偽はわからないまま。
愛であると言い切ったら偽証罪になるし、そうではないと断じても嘘つきにしかならない。
そんなところだろう。

適当にかけている音楽が耳をかすめていくが、何が残るでもない。
けれど少しは落ち着く。少なくとも孤独にさいなまれなくて済む。
その孤独が消えるわけではないのだけれど。

ずいぶんおとなしくなったねと、メールが届いた。
確かに、壁を走り抜けるようなことはしなくなった。
本質的なところは変わらなくとも。
切れ味が悪くなったとは言えるかもしれない。
それがいいことなのかどうかは検証中だ。
かつての僕と今の僕と、どちらが孤独であったのかも。

照りつける光はなく、夏はずいぶんおとなしい。

かつて夏の日に、ふたりで自転車に乗って海を目指した。
片道で七時間はかかる道程だった。
暑さは容赦なく、僕らを苦しめると同時に、僕らの意欲をかき立てた。
そのことの方が、愛に近しい気がする。

きみへメールを送ろうとして、でも手が止まって、これって愛だっけって考える。
愛じゃなければメールを送らないかと言えば、ノーで、結局送る。
愛じゃなくてもいいのかもしれない。どうしてこだわるのだろう。

温もりの肌触りが思い出せない。
夏の気温は人肌に似ている。
そのことの方が、愛に近しい気がする。



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