蛙2



蛙が花束を持ってやってきた
「おめでとう」
そう言われても僕には何の心当たりもない
蛙はいつもと同じ酸素ボンベを背負っていた

蛙は続ける
「きみはもうここの住人じゃなくなったのさ」
そう言われても僕には何の心当たりもない
蛙は今日も顔色が優れない

蛙は頭がおかしい
「きみがベルリンの壁を壊したのさ」
そう言われても僕には何の心当たりもない
それはすごいことなのかい?

蛙は嬉しそうに顔をほころばせながら
少し悲しそうにうつむく
僕がいなくなったらお前
ここに一人きりになっちまうじゃないか

なあ蛙
僕は黄金の海を目指して航海していたんだよ
気がついたらこんな所にいたけれど
まったく馬鹿らしい話

もう一度航海に出ろと言うのかい?

僕は蛙が嫌いだ
相手もしたくない
蛙は相変わらず酸素が足りないし
頭がおかしい



なあ蛙

僕はどこにも行きたくないよ
ねえ



BACK                                              TOP