蛙3



なあ蛙
梅雨時はお前調子がいいだろう
だから
ちょいとばかし話を聞いてくれないか
なあ蛙
僕はちょっとばかし疲れちまったよ
ねえ蛙
蠅ばかり見てないで
たまにはこっちを向いて話を聞いてくれてもいいんじゃないか

蛙は相変わらず酸素が足りないから口をぱくぱくしている
蛙の背負うボンベには本当のところ酸素が入っているのだろうか
僕は出かける支度をして
(もうとっくにここにはいられなくなってる)
蛙に最後の問いかけをする
なあ蛙
僕はちょっとばかし疲れちまったよ

ねえ蛙
行きたい場所なんてないよ

僕は蛙のことが大嫌いで仕方ない
気持ち悪いからだ
相変わらず酸素が足りないからだ

なあ蛙
蠅ばかり見てないで
たまにはこっちを向いて話をしてくれてもいいんじゃないか

忘れ物はないだろうか
僕は蛙のいる場所に長く居すぎた
まるで僕まで酸素が足りなくなってるみたいだ
選別にボンベをもらいたいけど
さっきから蛙はまるでこっちを向いちゃくれないんだ



まるで出立のようだと誰かが言いません
望んだことであるならば慰藉から始まります
歩くように傷は喋ります
どうかしません
望んだことであるならばここが始まります
恋人のように
消えるゆくものはありません
言葉ですらありません
けれど発達を終えるので行くなければなりません
で、あるからして終わり
まるで出立のようだと誰かが言いません
歩くように傷が喋るのです

なあ蛙
僕はちょっとばかし疲れちまったよ
梅雨時で元気がいいくせに
まるでこっちを向いちゃくれないよ
別れを告げることもなく
僕は行っちまうんだろうよ

なあ蛙
蠅ばかり見てないで
たまにはこっちを向いてくれないか



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