エックスレイ



僕らは空気の振動を音としてとらえ、
きみの美しい声を聞く

可視光線を景色としておぼえ、
曖昧な脳の神経がそれをつなぎ、
きみの描く美しい景色に感嘆するんだ


僕らは器用で、
そしてとても不器用だ


あなたの目はサーモグラフィーでできている
わずかな温度の差も逃さないから
僕が彼女に会ったときの微熱など簡単に気づいてしまうだろう

きみの耳にはアンテナがついている
通話料を貢ぐ必要なんかなくて
僕の発する電波をどこにいても聞きつけるだろう
(きみには中継基地なんていらないんだ)


きみは別な世界に生きている
僕と違うなにもかもが
あなたを遊離させるだろう


あなたは孤独に泣くだろう


僕はこの世にある全てのものに
ここにあるここに生きている全ての同化したなにもかもに
きみのいないこの世界の僕のいるこの世界の側で
近づけないことを悟りながらも
目をこらしてX線をとらえようとする


あなたはここにいるけれど
あなたは孤独に泣くだろう


僕はここにいるけれど
あなたに寄り添えないだろう
世界を共にする様々なものと
同じものを共有していくだろう




あなたは孤独に泣くだろう
僕はそれを慰めるだろう


そして僕は、世界を共にする全ての
分かち合うおなじものに
吐き出す似たような言葉に

吐き気をもよおすだろう



X線は見えない、まだ



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