散文詩



クレイジーの、
狂った、
感覚のずれた、
機知の外にある、


夢を見る。

陸橋から下ってくる車のライトが視界を一瞬だけ眩く照らして過ぎた。
眩しさの中で刹那だけこの世界から遊離したような感覚がある。
感覚がいつもより、鋭い。
こんな日は本当は真夜中の散歩なんかしちゃいけない。鬱になるから。
けれども無情にも、お気に入りのマルボロメンソールの箱は空っぽで、
だから近くの(夜中では煙草を売ってくれない)自販機を通り過ぎた向こうにあるコンビニに行かなくちゃいけなかった。

どうせこのままじゃ目も冴えてしまって眠れない。
せっかくだから暇つぶしのための雑誌でもついでに買っていこうか。

私はそのままふらふらと光に収束する虫の習性ように、夜の闇にひときわ光彩を放つコンビニに吸い寄せられるように歩を進めた。
横断歩道は青、停止線の手前で止まった車の前を横切って、
光へ。
光の放たれる方へ。


光は、
その波形でその存在を形作っているのです。
波打つように。
ゆらぎます。


ふらふら、する。
飲んだ薬のせいだろうか。
てっきりもう効かなくなったものとばかり。
寝るのを諦めかけた頃に効いてこなくてもいいじゃないか。

ああ、これなら、眠れる。
とんだ計算違いだ。
こんな所まで来ないでおとなしくベッドで待っていれば良かった。

透き通っていて光を漏らす自動ドアをくぐれば、視界の隅で、深夜だからレジのカウンターの中で店員のお兄さんがマンガを読みながら怠惰に働いているのを捉える。

ねえ、ここに夢は売ってませんか?
いい夢は。
売ってませんよね。
眠れたとしてもいい夢を見れるとは限らないものだから。
だから。
だけど。

見なきゃいけないのでしょう。
夢。
きっと。

くださいな。

「マルボロメンソール、ソフトをひとつ」



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