ダンス・ウィズ・ミー



透明なダンスフロア
安っぽい紙コップに入れられたカクテルを飲みながら
光源の下に目をやる
七色のダンスフロア

彼女が踊っている
纏ったドレスが何色なのかは
見る人によって意見が別れるところだ
例えば白
例えばピンク
例えば黒
踊るためのドレスではないはずなのに
彼女は軽やかに踊る

悲しいソナタに楽しげな踊りを
嬉しいワルツに淑やかな動きを
正義のマーチに艶やかな足取りで
切望のカンタータに希望を伝えて
彼女のドレスが揺らめく

ドレスが色づく
彼女のお気に入りのドレスだ
カメレオンのように色を変えるドレスだ
ラプソディに水色で
練習曲にピンクで
死の遊戯に赤をもって
生の悪戯に黒をもって
応える

ああ
切ないね
愛おしいね

彼女は慟哭しながら
ドレスでフロアを染め上げて
微笑んでいる
僕の見る限りでは
白っぽいピンクだ

透明なダンスフロア
七色のダンスフロア
いずれ店は閉まり
光がなくなっても
誰もが帰ってしまっても
彼女はひとりで踊るだろう
微笑みながら
白っぽいピンクで

僕は帰らないよ
カクテルを飲み干しても

ドレスを脱がして
透き通る肌を見てみたいけど
それはどうかな

フロアに上がってしまおうか
手を差し出したら
彼女は受け止めてくれるだろうか
ねえでも
踊りはうまくないから教えてよ



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