ビーフシチュー



羊と蛙がいる
羊は何匹も何匹も順番に柵を跳び越えていき
蛙は羊が跳び越えるたびに鳴いている
そんな情景が僕の心
眠りには落ちないけれど
頭痛はやまないのだけれど
少しは気晴らしになるのかな
でも本当は
きみに抱かれたい
言葉で慰められるのでは届かないものがあって
あいかわらず不器用だから
きみに抱いてもらって埋めたい
羊でも蛙でも案山子でも北極熊でもなく
綿のはみ出したぬいぐるみでも金魚でもなく壁蝨でもなく
猫でも蜥蜴でもモルモットでもメカでもなくペンギンでもなく
他の誰でも何でもなく
きみに

つらつらつらと文字を重ねて
ミネラルウォーターを飲んでも
ハンバーガーを食べたい気持ちは変わらない
これ以上太りたくないからなるべく我慢する
ストレスのせいか薬のせいかあるいは両方なのかはわからないけど
飢餓感は常にある
きみにその全てを埋めてもらえるのかどうか
正直自信はないんだ
けれど
フライドポテトを食べまくって太るよりはずっといい
他の誰でも何でもなく
きみだから
煙草の吸いすぎで癌になることに脅えるよりはずっといい
正直禁煙はできないと思うんだ
けれど
軽い煙草に変えたり吸う本数を減らしたりはできるかもしれない
その可能性は高い方がいい
我ながらとてもくだらないつまらない変化でしかないけど
でもきみが抱いてくれるならささやかなきっかけになるかもしれない
小さなきっかけが
僕を大きく変えるのかもしれない
その可能性は高い方がずっといい

羊と蛙がいる
羊は何匹も何匹も順番に柵を跳び越えていき
蛙は羊が跳び越えるたびに鳴いている
そんな情景が僕の心
きみが僕を呼ぶ
僕は蛙と羊の観察をやめて
きみのもとへ
ビーフシチューが冷めないうちに



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